今回は横山秀夫『ノースライト』を読みました。
どんな方にオススメなのかを書いていこうと思います。
ネタバレ等はないと思います。
一級建築士の青瀬は、信濃追分に向かっていた。たっての希望で設計した新築の家。しかし、越してきたはずの家族の姿はなく、ただ一脚の古い椅子だけが浅間山を望むように残されていた。一家はどこへ消えたのか? 伝説の建築家タウトと椅子の関係は? 事務所の命運を懸けたコンペの成り行きは? 待望の新作長編ミステリー。
横山秀夫『ノースライト』|新潮社
主人公の心情に丁寧に寄り添える
人生を一通り経験してきた方だと、共感できるのではないかと思います。
離婚であったり、仕事での劣等感を感じている主人公・青瀬。
彼の心情の移り変わりがページが進み少しずつ自分・周囲が変化していく中において、丁寧に描かれていると思いました。
はじめのうちは、劇的に物語が進行していくというよりも、丁寧に主人公に向き合うという感じでした。
なので、スピード感のある小説が読みたい方にはオススメしづらいです。
ただ、後半の謎解きの部分は読ませてくれるな~と感じるので、そこまでたどり着ければスピード感を味わえると思います。
ブルーノ・タウトに興味がある
私は、あらすじにあった「ブルーノ・タウトの椅子が残されていた」というところから、本書に興味を持って読み始めました。
ところどころに、タウトのエピソードが出てきてより興味が持てるようになりました。
そして、最後の〔参考文献〕
見開きのページでたくさんのブルーノ・タウトに関する書籍が挙げられています。
ここから芋づる式に次に読みたい本を探しても良いかもしれませんね。
著者である横山秀夫さんが数多くのタウトに関する書物をよみ、この小説を書き上げたのだなという情熱が伝わってくるようでした。
私の心に残ったフレーズたち
青い。…(中略)…いつか見たような、どこかで見たような、宇宙のほうから地球を見ているような、美しく、懐かしく、そして心が解き放たれていくような。
ノースライト P.77
ここは主人公があらすじにもある邸宅にて、ブルーノ・タウトのものと思われる椅子に座った時の感想の部分です。
宇宙から地球を見ているイメージ画像みたいなものがすぐに浮かんできました。
ガガーリンの「地球は青かった」を想像したりもしました。
椅子に座り窓を見上げる行為の描写において、宇宙から地球を見下ろす行為の時の描写の言葉を使うということのコントラストみたいなものを感じました。
私の頭の中に画像を伴ったイメージとして、主人公が椅子に座った時の感想が伝わりました。
やっぱり小説家ってすごい!!と感じましたね。(笑)

埋めること
足りないものを埋めること
埋めても埋めても足りないものを
ただひたすら埋めること
ノースライト P.311
物語のなかで画家として登場する故人・藤宮春子が残した言葉です。
この言葉だけを読んでも人生観のようなものを学べるなぁと思いました。
これからの人生でも、いろんなことがきっと起こりますよね。
それを克服であったり、乗り越えていくために埋める。
でも、もちろん埋まらなくてまた埋める。
もう嫌だと思いながらも埋めるしかない。
ひたむきに埋め続ければ、いつか光が差し込んでくれるかもしれない。
そんなことを考えてしまいました。
終わりに…
今回は、横山秀夫『ノースライト』を紹介しました。
少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ読んでみてくださいませ。
読書を通じて人生が少しでも豊かになりますように祈っております。

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